蛇音/よーすけ
く考えていた。あの少年はその集落の住民に間違いない。あの集落の住民は、皆あの少年のように不潔な格好をしているんだろうか。野菜は大人の命令で盗みに行かされているんだろうか。
栗須は風呂に入ると念入りに自分の体を磨いた。いつまでも垢が取れないような気がして彼は意固地になった。
「なあ、あの山の中って誰か住んでんの?」夕飯のとき、栗須は母に無垢を装って訊いた。そういう話題が大人にとって何かしらの不都合がある事は彼も薄々感じ取っていた。
母は栗須の目を真意を探るようにじっと見つめた。そしていつものように息子の質問の裏にある悪意を親らしい観察眼で読み取った。
「住んでるわよ。結構昔から」
栗須
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