蛇音/よーすけ
 
車に跨り家に向かって漕ぎ始めた。土で汚れたその人参は道路の上に放置され、誰の目に触れる事もないまま広がってくる影の中に飲み込まれた。
その山は隣の県との間に城壁のように横に広く聳えていた。高いところでは二百メートルを超えるところもあるが、栗須の住んでいる街ではせいぜい五十メートルという高さで、隣の県へ繋がる道もあった。だが傾斜がきつく道も曲がりくねっていて舗装もあまりされてないかなりの悪路なため、だいたいは遠回りをしてでも山を避けて通った。
そして何よりその山に関して妙な噂があった。昨年、栗須の同級生の亀井は「あの山には原始人がいる」と言い始めた。初めは勿論そんなこと誰も信じずただの狂言だと思
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