さよならパリ??高塚謙太郎とボードレール/葉leaf
わる。家具さえ夢見るような風情を持つ。植物や鉱物と同じく、夢幻に遊ぶ生命を授けられてでもいるようだ。織物の類は声のない言葉を語っている、花々のように、大空のように、沈み行く太陽のように。
(『パリの憂愁』「二重の部屋」)
翻る乳房の屋根裏で、滞る在来線、或は、心思う軸の傾き、雲級並べ。
(『さよならニッポン』「姫」)
この二つの引用部を比較してみよう。ボードレールの吐く言葉は、外界の事物と矛盾しない。つまり、ボードレールの描くものは外界に存在することが可能である。比喩や修飾がかけられていても、「家具」や「織物」は、そのまま外
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