さよならパリ??高塚謙太郎とボードレール/葉leaf
 
けではないが、この三つの特徴は私にボードレールを想起させるに十分だった。そこで、本稿では『さよならニッポン』と、ボードレールの『パリの憂愁』(福永武彦訳、岩波文庫、1957年)を比較することによって、高塚とボードレールとの共通点や相違点を指摘し、そこで共通点が意外と多いことを示し、生きた時代も人生もスタイルも違う二人の詩人の共通性の根拠に迫る。『パリの憂愁』を選んだのは、高塚の詩に散文が多く、『パリの憂愁』もまた散文詩であること、また『パリの憂愁』からはボードレールの特質が見えやすいこと、による。

1.一つの図式

 家具という家具は、長々と寝そべり、疲れ倦んだ形をしてぐったりと横たわる
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