レンズ/草野春心
 
いたアパートの
  硬いベッドの上で
  本を読む君を写したものがある
  それは一際
  眩しい光のなかで
  焼きつけられたもの
  本のページに刻まれた文字は
  一つも見えない
  それでも君の横顔は
  幸福のようなものを宿している
  そう見える
  確かその本は僕が
  君の誕生日に贈ったやつだ
  外国が舞台の
  外国の小説
  透き通るような美しい朝
  男と女が食卓で会話をするところから
  物語はその幕を開ける
  老いた夫はラジオをつけたり
  新聞を広げたりと忙しなく
  痩せた女がシリアルをボウルに開け
  とぷとぷと牛乳を注
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