煤けた夜/ホロウ・シカエルボク
 
くなったものみたいに、動きを止めて…流れを失くしてしまう、そしてなにもかも逆流してしまう…冷えた外気がピラニアの様に身体に喰らいつく、最後の一滴まで吐く…最後の一滴まで吐いてしまわなければ、禍々しいものを身体に残したままにしていちゃいけない…誰かの足音が背後から聞こえる、「飲んでいるのか?ドラッグじゃねえだろうな?」警官の声の響きは最初の響きでそうだと判るようになっている…違うよ、と俺は答える、「ひ弱なだけだ」警官は笑う…大柄な男だ、夜の様に黒い身体の…「そのようだな」彼はまだ痙攣している俺の肩をぽんぽんと叩いて去ってゆく、パトカーのドアが閉まる音が聞こえた、車が来た音など少しも聞こえなかった、た
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