煤けた夜/ホロウ・シカエルボク
 
ざりするような冷たい空の三月のことだった、うんざりするような冷たい空の…まだ夜が明ける少し前のこと、おそらく世界に存在するもののなかで、一番空気が肌を刺す時間帯…俺は何かの集まりから逃げてそこに辿りついた、お前は先にそこへ 来ていた、そして俺はジンを、お前は何か甘ったるいカクテルを飲みながら、ジュークボックスが叩き出したブラウン・シュガーのイントロに合わせて、同じタイミングでステップを踏んだ…ただそれだけのことだった、それはいかにも、あぶれたものたちのために用意されたメルヘンのように思えたのさ、ただそれだけのことだった…放出した後に見る月は死人の記憶のように色を失くしたイエローで、それは夜空の欠乏
[次のページ]
戻る   Point(2)