堕胎/草野春心
 
緑色の箱を取り出す
  幾つも
  幾つも
  数珠繋ぎに
  コンドームの箱を
  堕胎させる
  何も言わず
  呻き声一つ漏らさず



  君の
  不似合いな腹の膨らみが
  見る見る萎んでゆき
  箱の数が五十を越えたあたりで
  君は静かに絶命する
  機械が動きを止めるように
  ベッドに倒れ伏す
  君と僕の間に残された
  血液や体液にまみれた
  コンドームの箱の山は何処か
  滑稽にさえ見えるけれど
  それは
  紛れもなく
  君の痛みの形
  それが君の受けた屈辱の形
  そうだよ、それは
  僕のコンドームじゃな
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