堕胎/草野春心
 
ゃない
  君のコンドームだ
  そうだよ
  その通りだ
  愛する人よ、
  君と最後に話をしたのは
  もう二年近く前になる
  話と呼ぶには
  つらすぎるものだったけれど



  愛する人よ、
  僕はもっと激しく
  もっともっとぺしゃんこに
  君に踏みにじられるべきだった
  理不尽に磔にされ
  手足には鋭い釘を刺され
  何度も
  何度も
  何度も
  何度も
  馬鹿みたいに何度も鞭打たれ
  それから獰猛なナイフで
  少しずつ皮を剥がされ
  君の手によって
  君の脚によって
  君の
  しっとりと濡れた
  赤い女性器によって
  柔らかな乳房によって
  髪の毛によって
  薄い陰毛によって
  優しく輝く瞳によって
  僕は踏みにじられ
  破壊されるべきだった
  そうだよ
  その通りだ
  なぜなら僕はそのために
  この世に生まれてきたんだから




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