堕胎/草野春心
 
が並んでいて
  僕がおそるおそる寝室に入ると
  ベッドには女が座っている
  二十歳ぐらいで
  髪は鋏をいれたばかりのようで
  それが君だということはすぐにわかった
  君はまったくの裸で
  まるで
  二年前の最後の夜から
  ずっと僕を待っていたみたいで
  けれどもその下腹は
  妊婦のように膨らんでいる



  僕は
  君を抱きしめたかった、強く
  もう二度と
  喪わずにすむように
  けれど僕が近寄ると君は、
  これはあなたの私じゃないわ
  私の私なのよ
  そう言って
  血塊のように赤いヴァギナに手を入れ
  緑色
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