堕胎/草野春心
八歳とか九歳とか、
それぐらいだ
純白のシャツに
鮮やかな赤いスカートをはいて
少女は微笑している
けれどもその瞳には何か
雹を思わせる冷気が、こんこんと沈殿している
僕が箱を手に取ると
その鋭い視線が
箱へと移動するのがわかる
これが何なのか
何の目的に使うものなのか、
彼女は理解している
そんな気がする
おそらく、
この世に生まれた瞬間から
やがて僕は
その箱をレジに持ってゆくが
少女はその場に立っているだけで
ついてはこない
咎めるでも
弁解を求めるでもない
た
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