堕胎/草野春心
 


  僕らがコンビニと呼んでいる
  長細い直方体には
  どんなものでも揃っている
  弁当もポテトチップスも
  洗剤や電池や、ティッシュまで
  だから僕がその日
  その、冬が始まりかけていた日
  コンドームの箱を眺めていたのも
  別に不思議なことじゃない
  愛する人よ、
  君と最後に話をしたのは
  もう二年近く前になるけれど
  こうしてコンビニに入って
  君の目を盗んであれを買うのが
  たまらなく好きだった



  その、どぎつい
  緑色の箱を
  僕が手に取ろうとしたとき
  一人の少女が、僕を見上げていた
  八歳
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