これは懺悔ではない。/安樹
も、怒って罵ったりもしないでください。
何にしても、私があなたを傷付けた事実は変わらないのですから。
でも。ああでも、見えなかったのです。
あの忌々しい塀に阻まれ、私にはあなたが見えなかったのです。
だから、と申しましたところで、なにもないのですが。
ああ、どうか聴いてください。私の罪を全て観てください。
私は祖父を忘れました。
私は祖母から金をせびりました。
私は兄に狂おしいまでの愛憎を抱きました。
そして私は母の期待を、信頼を、愛を、その全てを裏切って生きているのです。
あああ、私は何をしているのでしょうか。
こんな事をここ記して、いったい何になるのでしょ
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