森のエニシダ/Lily Philia
ぐり抜けると
そこはもう春です。
ララにただひとつある沼には
月の輪がかかり
水面は水仙が咲き散ったようです。
「いいよるですね」
「いいよるですね」
たくさんの声が
鈴のように
星のように
立ち上がり
そこらじゅういっぱい
雪原のようにします。
天国に手がとどきそうな夜
そして
ララ、
あなたのことが
どんなにすきか
どんなにすきか
つぐみは月に
まっさかさまに落ちてゆきました。
自分のためではなく
誰かのために祈ること
それは幸福です。
ララにただひとつの沼
そこに沈んでいるのは
つぐみです。
桜森
あ
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