森のエニシダ/Lily Philia
 
くような夜に
白い陰を
いくつもいくつもばらまいて
春がやってきました。
つぐみにとっては
真っ赤なすぐりの実をついばむことも
ひらひらと舞う花びらを追いかけることも
それはおんなしように
とてもすてきなことです。
ほんとうにほんとうにたいせつなものは
いつも目にみえないから
あたしたちは
そこらじゅういちめんに
浮かび上がった
ひみつのばしょをあとにして
 (たとえば
 桜の花びらに耽溺する時
 たとえば
 蜜色の日溜まりを
 つぅいつぅいと渡る時)
あたしたちは
明るい光の中で
ただひとつのものでありたいなと思いました。
のいばらのトンネルをくぐり
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