世界にはどうしてこんなにたくさんの音が溢れているのだろう/ホロウ・シカエルボク
だ手持無沙汰になったことはないのだ、ただ、きっとそうすることが出来るだろうとぼんやりと考えてみるだけだ、鉄を軋ませる警備員が表通りを通り過ぎる度にさ、薄い窓の下から聞こえてくる年寄りたちの世間話が今日は聞こえてこない、その代わりに行き過ぎる救急車のサイレンばかりが聞こえてくる、あの音を耳にする度に誰もがきっと同じことを考えるだろう、「あの中でいったい何人が棺桶の中に入るのだろう」無関係なやつの死は退屈しのぎのカウントの対象でしかない、歪み流れ消えてゆくサイレンの残響、現代のレクイエムは街路で打ち鳴らされる、どんなところで生まれたものも偽善的な大理石の中で見送られる、冥福なんか祈りはしないよ、こんな
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