風切羽/yuko
ぶ、足元が見えない。
暗闇に溶け込んだグラス。机の上に投げ出されたコンパス。地図上を広げられ痛む羽は、僕のものではない。彼のものでもない。腱と紐が断たれ、崩れていく線形。はずされた意味のくびき。
計量線が揺れて。増殖していく、影に境目はなく、一人ではない、二人でもない、細胞のかたまり。動的な平衡に抱かれ、柔かな心臓を握り潰した、両親は雪像になっていく。触れた指先の熱い、溶けだした水を飲み込むこれは、僕か。流れる体液の甘みは、誰のものだったか。名前が僕たちを裁断して、排泄された永遠。雹が窓を叩く、その音が神経を焼き切っていく。だれでもいいからはやく!僕たちの名を呼んで?ください!
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