風切羽/yuko
 

暗がりで数を数えているだれかの指が、絶えまなく折られ、開かれ、回り続ける映写機はだくだくと流れていく。焦点が浅い写真と、欠損した完成図。粉々になったガラス。冷えた惑星の記憶を、辿る指先。地図に方角は記されておらず、これは僕か、君か、人間のレプリカがふたつ、涙を模して並んでいる、窓辺。飛び立つものだけが生きている。

羽ばたきの影が裂けて!さかしまの傷口を、象った護岸。質量だけ窪んだ部屋に、流れこむ密度。点滅する血飛沫の音。両腕を重ね、その骨を折り、朝が来るたび祈りの形を真似た。冷たい対称から、たなびく甘い煙。鬣の白い馬が、音もなく翔け上がっていく。雪解けを待たずに産まれ、死んでいった、僕。
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