漂流/花形新次
 
青、青は都会の海の色ではなくて
映り込んだ半島の空の色だ
水面に浮かぶ彼の名を誰も知らなかった
休日のサラリーマンのぼんやりとした気分と同じように
朝の風景は
彼の思想の輪郭までも
少しずつ溶かし始めた

どれくらい此処に漂っていたのだろう
何隻もの軍艦が鼻先をかすめるように過ぎて行った
瑠璃色に光る濡れた髪の少女も

ウインドサーフィンの少女が彼に訊ねた
 あなたにブライアン・ウィルソンの歌は聴こえたかしら?
 神のみぞ知る?
 いいえ、素敵じゃないか
 それってきみのこと、それとも・・・・
 もちろん、あなたのことよ

彼は、うつ伏せと仰向けを繰り返しなが
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