漂流/花形新次
 
ながら
 そんなこと言われたのは初めてだな・・・・
と、ちょっぴりはにかんだ表情で
手を振って走り去る少女に向かって
瞑ったままでウインクをした

 もっと早くに出会いたかったね、ベイビー

深く、深く潜り込んで
陽の当らないぐらい深いところまで
潜り込んでしまうべきなのだろうか?
グロテスクな、それでいて滑稽なこの自分に
ピッタリお似合いの場所が
そこにはあるのかも知れない
ないのかも知れない

 ああ、まただ・・・・、同じことだ
 もうお終いにしよう
 お終いにするためにこうしているんじゃないのか

彼は決めた
考えることを止め、やさしい声を聴くことを止め
彼はいつまでも漂い続けることに決めた

半年後
ワイキキビーチに打ちあげられた彼の名を
相変わらず誰も知らなかった
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