剥がれた屋根の歌/竜門勇気
からない虫がやってくる
缶詰のビールを幾つか空にすると
半分ぐらいは見えなくなった
椅子の上で時々
僕が落とす涙の滴を
残った半分がコロコロ転がして
壁の隙間から暗闇へ持って行く
世界の隙間の部屋は
今日も静寂の中
郵便配達夫が棺桶を片手にドアを打つ他にそれを破るものはいない
配達夫はサインをせがむと
幻のように消えて
僕はドアを開けたまま
いつまでも茶色い道の向こうを眺めてる
靴底に張り付いたガムをはがしながら
どうやったら新聞紙の中の
愚か者共を消しされるか考えていると
中身の入った缶詰がこの家には一つもないことに気が付いた
半日かけてうろうろと部屋
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