剥がれた屋根の歌/竜門勇気
 
部屋をいったりきたりしてみたが
この家にある蛇口は
ただの一つも本来の役割を果たしていないことが分かっただけだった
日記に書いておこう
テーブルの裏側は日記を書くにはうってつけなんだ

世界の果ての丘で
星の歌を聴いている
甘ったるいバターみたいに
胸くそが悪くなる音楽だ
崩れたバルコニーと
剥がれた屋根の間
こんな夜にだけ
虫達は涙を連れて帰ってくる

次に僕が生まれたら
光の粒になりたい
ゆらゆら揺れて
なにも見えなくなるほど速く走るんだ
崩れたバルコニーと
剥がれた屋根の歌
こんな夜にだけ
僕は涙をこぼすのを忘れてる
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