近所での小さな争い/殿岡秀秋
 
てきた
男は何か、という顔をしている。ぼくは意識したわけではないが、一瞬、男をにらみつけたかもしれない。
四メーター道路をはさんだゴミ置き場へ男を誘導する。その隣のぼくの家の塀を指差す。
「このゴミはおたくのでしょう」
「コンクリートが固まってしまったんだよ」
「ここはうちの塀だよ」
「ああ悪かったね」
意外にも男は簡単にあやまった。すぐにセメントの袋をもって男はゴミ置き場へ移した。
「それはゴミ業者が回収しなかったんじゃない」
ぼくの言葉に男は振り向いて、
「燃えないゴミの袋にいれればよかったんだよ」
とこたえた
「その日までここにおいておくの」
とぼくがいうと、男は少
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