近所での小さな争い/殿岡秀秋
は少し考えて、自分の家の前の道路にもっていって、袋を投げた。
ぼくはそれでいいとおもって家に帰る。近所の奥さんたちが遠くで見ている。まだ寝ている妻に、
「終ったよ」
と告げながら、背広に着替える。
出勤のために家を出ると、投げられた袋は男の家の塀に立てかけてある。男が直したのだろう。ぼくはそのまま駅まで歩く。無事におわってからだから力がぬけていく。
こういうことがとても大きな問題になるのはどうしてだろう。些細なことで大いに悩んでしまう。人生にはもっと大問題があるようにみえて、実際には、こんなことで神経をすりつぶしている。それでも無事片づいたので、ほっとして温かい珈琲を飲む。
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