前奏曲/メチターチェリ
を身体全身で浴びて、不純な空気を洗い流そうと
しかし、駅前の空気は排ガスが多いに違いない
耳元ではモニク・アースがドビュッシーを弾き続けていた
地下鉄に乗り継ぎ地上に出たときには、空から最初の雨粒が落ち始めていた
緩慢な雨足はこのまま歩いて街路をわたり、目的地に辿り着くまでの時間を許してくれるだろう
界隈は京都と聞いて憧れる町屋風情の軒並みではなかったが、少し路地を入れば見つけられるかもしれない
人々の足取りも心なしか穏やかな気がした
もっとも、これはぼくの先入見が強いのだ
午後の雑踏は開かれた傘の数を増しながらそれぞれの屋根へと急いでいる
大学はぐるりを黒い鉄柵で囲まれ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)