聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
 
う細心の注意を払っているのに、少年は教室の中で自分と話をしたがっている、仲良くなりたがっている、物足りない学校生活を豊かにしようとしている、その行動が私の安寧を脅かしていると思った。少女は本をしまって立ち上がり、教室を出ていこうとし、おどおどとついてくる成瀬に「わたしトイレ」と呟いて引き離した。その日、成瀬は放課後まで話しかけてこなかった。次の授業が終わったあと珍しく成瀬以外の同級生から話しかけられた。
 「ねぇ、サチコ。成瀬とつきあってんの?」
 3人でグループを作らないと挑発出来ない女子たちが絡んできて、案の定、とサチコは思った。
 「そんなわけないじゃーん。てかあいつは別のクラスの男と
[次のページ]
戻る   Point(0)