聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
 

 「あがっていきなよ」
 「えっ、あっ、いいんですか」
 「……」
 「あっ、じゃ、じゃぁ……」
 玄関をあけるとボンが飛び出して成瀬を舐め回した。少女は何のリアクションも見せず2階へ上がっていき、自分の部屋のカギを開けた。しばらく2階の階段のそばから様子を窺っていた成瀬だが、少女に目配せされて、おじゃましますと部屋に入った。少女はすぐにカギを閉めた。電気をつけて出窓とカーテンを閉めると彼女は成瀬を見て言った。
 「キスする?」
 「えっ」
 「わたしのこと好きなんでしょ?」
 少年は身体をびくっと震わせ、喉を鳴らした。そして小さく頷き、次に首を横に振った。少女はふっと笑った
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