聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
今日も学校の時間は無駄に過ぎた。彼女が廃棄場に向かっていると一人の男子に声をかけられた。
「あ、あの」
えっと思って振り返ると、バラ色のケツこと成瀬が立っていた。彼が教室でイジメられ、パンツを脱がされたときに彼女の頭の中でその言葉が定着した。昼休みを過ごしている図書館でよく彼を見た。
「なに?」
「し、霜村さん、」
成瀬は極度の緊張症で言葉が詰まり、顔を真っ赤にして俯いてしまった。少女は黙って歩きだした。しかしすぐに振り返り、呆然と立ち尽くしている成瀬に手を振ってついてくるようにジェスチャーした。まったく会話もなしで家に着き、少女はカバンの中からカギを取り出して開けた。
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