聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
した。
いつもより早く帰ったサチコの父親は、ボンに舐め回されながらまず玄関の靴を見て娘の不在を確認しほっとする。書斎に入り、机の上に見慣れない包装された箱が置いてあるのに気付いた。まさかとは思ったが信じられない気持だった。おそるおそる開けると中身はブランドもののネクタイだった。これを置いた思い当たる人物は一人しかいない。だが、それでも同僚や別れた妻などありえない人物を想像した。
「サチコ……」
父親は車に戻り、アクセルを踏んだ。
女子生徒の一人がサチコに入れた一発の蹴りが他の生徒のスイッチを入れた。暴力はエスカレートしていき、まるで誰が最も残忍になれるかを競いあっているかの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)