聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
 
ら」
 傘を捨て、鉄パイプを振り上げた。
 「ヤメテクダサイ!」
 少女の腕が硬直した。ロボットが死に際に声を発するのは初めてのことだった。それにその言葉はやけに生々しかった。少女は傘を拾いなおして言った。
 「なに、あんた死にたくないの?」
 「ハイ」
 「あんた、生きてんの?」
 「イイエ、イキテハイマセン」
 少女はこの今までとは明らかに異色なロボットのことを思案した。少なくともこれだけコミュニケーションが取れるのは面白いと思った。よほど高性能のチップを搭載しているのかと考えた。しかし暫く間を置いても向こうから喋ることはなく、ロボットのプログラムの従順さとしょせんは命を持たな
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