聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
 
笑い方をしなくなっていた。そして目は真っ黒く、凝固していた。
 「いいんだ。それより自殺しろだなんて言ってごめんね」
 少女は成瀬のこれから一緒に解決策を見つけ出そうという意志のこもった精悍な目を無感情に覗きこんで言った。
 「こうなったら、誰か殺すしかないよ」

 少女は湧き上がる暴力衝動に急かされながら足早に廃棄場へ向かい、昨日のロボットを叩き潰すために鉄パイプを握った。ロボットは相変わらず生き埋めのままで、少女の傘で雨から遮られた。
 「ワタシハボウスイカコウデスカラヘイキデスヨ」
 少女は思わず鼻で笑い、すぐさまその笑いに自己嫌悪を感じた。
 「いや、もうそんなのいいから」
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