聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
 
イジメだ、と少女は思い、笑って言った。
 「うちムカつく親父がいるからなるべく帰りたくなくってさ」
 しんとしていた。少女は何かまずいことでも言ったかと数秒前の記憶を遡ろうとした。
 「ねぇそのさあ、鼻でふんって笑うのやめてくんない?」
 少女は、あっと思った。別の女子も追従する。
 「あんたさ、自分は他人を見透かす側で、みんなのこと馬鹿だと思ってるでしょ」
 教室中がこのやりとりを見つめていた。もう今日からの標的は決まったらしい。少女は何も言い訳をしなかった。
 放課後、成瀬が話しかけてきた。
 「まずは謝ります、ごめんなさい!」
 少女はもう馬鹿な同級生に見透かされていた笑い
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