聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
いオープンカーから子供のように足をボンネットへ投げ出し、指を拳銃の形にして海峡を行き交う貨物船の荷物に狙いを定め「バァン、バァン、バァン……」と撃った。少女は少年のことを想った。しかし彼女は彼に微塵の恋心も持っておらず、また誰かを愛したという経験もなかった。
「愛って、何?」
少年の想いが伝わり胸が疼いた。ジェット音が聞こえた。少女は拳銃を構え、旅客機に向けた。
「バァン」
車から飛び降り、ゴーグルと鉄パイプを持って何か面白いものを探す旅へ出た。あちこちに少女に破壊されたロボットの残骸が見受けられた。「みんな必要とされて生まれてきたはずなのにね」と言って鼻で笑った。どこからともなく
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