聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
 

 「キミだって変わりたいくせに!」
 少年が激昂して放った台詞は意味としては平凡だったが、他人の言葉として突き付けられたとき、包丁のように鋭くなって少女の胸を突き刺した。まさに不意打ちだった。少年は苦しそうに荒々しく息を吐きながらも、その視線は彼女の目をじっと睨んでいる。彼女は人の顔の変わる様をここまで鮮烈に見たことは初めてのような気がした。
 「ご、ごめん」
 謝るしかなかった。
 「ごめんなさい」
 涙が溢れてきて止まりそうになかったので少女は思わず顔を腕で覆った。それでも少女はすぐに気丈に振る舞い、それ以上少年には何も言わず、廃棄場へ一人で向かった。
 フロントガラスのないオ
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