ガーゴイル/三条麗菜
 
 この空へと

何十年にも渡り
都市を見下ろしてきたその目からは
何の表情も読みとれないが
時々体を震わせるのは
嬉しいからだろうか

 俺を造った石工は
 この都市に埋もれて死んだ
 仕事がなくなった冬に
 凍えて死んだのだ
 俺は助けに行けなかった
 俺たちが動けないのは
 役割に縛られているからだ
 石というものは他の動物や植物よりも
 役割に忠実な生き物なのさ

都市が舞い上げる埃は恐ろしく
白い鳥はたちまち汚れてゆく
その汚れはこすったぐらいでは落ちない
鳥の目からはしだいに
光が失われてゆく

 この鳥の役割は
 俺の跡を継いでこの都市
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