自転車/さすらいのまーつん
 
いる
そう気付いたとき
美酒のような誇りが 胸に満ちてくる
誰も要らない 自分だけでいい
この平凡であり そして無二の存在
その時僕は 愛の正体を垣間見る
鮫の笑いは はためく海賊旗
首筋を這い降りる 汗
大腿の筋肉が 軋む

もっとくれ 酸素を 酸素をくれ
僕はしゃにむに 風をむさぼる
今死ねたらどんなにいいだろう、という思いが
ふいに脳裏をかすめる
このまま天国にいけたら、それは腹上死に近い
束になって降ってくる 刹那の出会いに
目もくれず 駆け抜けていく快感
買い物帰りの主婦の 驚き顔
振り向きかけた 学生
急停車する トラック
僕はわがままな ボール
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