自転車/さすらいのまーつん
 
ールペンになって
人の流れの中に 一本の直線を引き降ろしていく

やがて
自転車から降りた僕は
がらんとした公園に のろのろと入ってくる
もう輝きはない ただの石ころに戻って
その手がキーキーと引いている 自転車もまた
脈動する獣から ただの表情のない 鉄の塊になった
くしゃくしゃになった髪で 荒い息をつくオジサンを
ただ1人残っていた子供が 小さな両手にゴム毬を抱きながら
くすくす笑って 見ている
母親の呼び声をよそに 秋の声に耳を済ませながら

それも 別にかまわない
どうせいずれは 忘れてくれるのだから
記憶のいいところは 朽ちていくことだ
僕は 枯葉の舞う 夕暮れの公園を横切り
水のみ台にかがみこむと 金臭いほとばしりを 野良犬のようにむさぼった  
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