自転車/さすらいのまーつん
 
きる
その時僕は 放たれた矢となって
アスファルトの上を 飛び始める

音 流星のように飛び過ぎる
けたたましいクラクション のどかなおしゃべり
踏み切りの鐘 その物悲しく 間延びした音色が
時の監獄の 鉄格子の隙間から伸ばされた
死者の指先のように 僕の汗ばむ肩を触り そして離れる 

光 飴のように伸びていく
景色は溶けて流れだし 色彩のトンネルとなり その壁に滲む 明滅する赤青黄の信号
暗い木々のシルエットの隙間から 豊穣なビールのように溢れ出る 秋の陽光
空は秋色の天井になり 遠近法のかなたに向かって 細長く伸びていく 

この風景を 自分の命で作り出している
[次のページ]
戻る   Point(3)