を/salco
 
筋力だけで立ち上がります。
 「母ちゃんよ。そういうのおヒスてえンだぜ、最近はよ。ひひひ!」


 ああもう、お前みたいな怠けもん金輪際うちに置かないからね。どこへ
なり行っちまいな! 
 そんな母ごころを背中に浴びて土間へ下りますてえと、白熱も侘しい裸
電球の下で親父が黙然と片付けを始めております。お袋と違い無口なタチ
でしてね。あたしも黙然と手伝います。分けも隔ても妹ひとり、継ぎ手は
あたしっきゃおりません。
 まあ考えてみますれば、いくら憧れたところで、何年鍛錬すりゃこのひ
ょろひょろした体にあれだけの筋肉が付くのか、雲をつかむ心持もしない
ではない。ただ、今ンところ
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