指の味がしそうな塩水/ズー
んはつかみかかってきて、べそをかき、コップを空にするから、
何年もべとべとしているカウンターの隅で先客の小男が茄子にかぶりついたのを、反転させて、シマさんに与えると、頬張って、コップを空にする。
のん兵衛のはなしなんか、もう止そうと考えはじめた、ぼくの肩に腕をまわし、いっしょに海でもみにいこーよーと甘えてきて、空になったコップを手放さない。
膝のわるいおばちゃんに欠伸をさせてから、シマさんにお勘定をすまさせ、いまから海はきつい、海のはなしの映画でもみようよと、家まで引きずっていき、真っ暗にした部屋で、気休めだけどって、塩水を入れたコップに、ふたり指を浸け、黙りこくったまま我にかえっていく波音
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