友引のひと/恋月 ぴの
 
らしき喪服姿は見当たらず
このあたりは森深い丘陵地帯なのか

それでいて意図した静けさに支配されているのは隠しようも無く




恥ずかしいぐらい質素だった母の葬儀
よくあることらしく嫌な顔ひとつしない係りのひとに尋ねれば
あれは行旅死亡人を荼毘に付しているとのこと

運転手は棺を館内へ運び終えると
駐車場で暫しの時間待ちでもするようだった

打ち合わせの電話でもかかってきたのか
白い半そでシャツの運転手が忙しく書類をめくっていた

配車してくれたタクシーはどうしたのだろう

何処かで道に迷っているのだろうか

生きる目的を見失ったまま
今頃三途の川
[次のページ]
戻る   Point(23)