友引のひと/恋月 ぴの
 
の川を彷徨しているに違い無く

行旅死亡人

それは私のことなのかも知れず




また一台、粗末な霊柩車が正面玄関へと滑り込む

助手席には位牌を抱いた餓鬼の姿

後部ドアを運転手が開くと
ダニが湧き出してきたかのように腐臭漂わせた餓鬼の群れ

今日はこんな日柄だったのだ

弟と私
そんな友引の日に母を弔ったのだ

位牌に戒名など間に合うはずも無く
「故」と「之霊位」の間には母の名前

それで喪主としての務めを果たせたのだろうか

ヒグラシでも鳴いていて欲しかった
過ぎ去りし季節にしては眩しさ残る空模様だった





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