光の棺/草野春心
 

  音もなく溢れ
  生きものが群れるように
  つぎからつぎへと
  染み
  溢れ
  目に見えぬ気流に乗り
  光の靄となってたなびく……
  瞳が光を映し、光が瞳を映し、どこへも
  辿り着くことをしない。かぎりない反射
  のなかで、老いた女は静かに笑っている。
  女の手がきみと出会う。きみの手がきみ
  と出会う。
  電車のようなものが脱線し、破裂する、
  赤く。子どもたちの、華奢な脚のような
  ものは、急ぐように腫れてゆく、黒く。
  幾万枚の新聞紙が裁断され、句読点はい
  つまでも軽んじられる。タクトは汗で滑
  り、指揮者の手から
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