光の棺/草野春心
 
る。
  髪の白い指揮者が、壇上でタクトを振
  り上げる。曇り一つ無い鏡に、顔の無
  い男が映される。
  青空の下で、少年が犬を土に埋める。
  無表情に、あくまで無機質に、少年は
  スコップで穴を掘り、犬の遺体を入れ、
  その上に、たっぷりの土と砂をスコッ
  プでかぶせてゆく。歳月が、少年の肉
  体の片隅に、苛みを連れてくる。その
  暗闇の奥で一瞬、炎がゆらめく。一つ
  の風が、もう一つの風へと姿を変える。
  人の手が、別のなにかの手と出会う。
  ……夜、
  暗闇が
  暗闇を纏い終えたとき
  その箱から
  微小な
  白い球体が
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