お片づけ/千波 一也
 
聞いている





守れなかったことの
寂しさが
悔しさを
呼ぶ

守れなかったことの
悔しさが
寂しさを
深くする

なにを
守れなかったのか
それはきれいに
忘れても





きみの願いの
うつくしかったことを
ぼくは信じてみるよ

きみの願いの
けがれを語ったりしたら
ぼくはこのさき
なんにも
願えない





履き古した靴の
いったいどこが
いとおしいのだろうね

指になじむ
紐の擦り切れ具合かな

無難に選んだ彩りの
褪せ具合かな

どこの物かもわからない
あちらこちらの

[次のページ]
戻る   Point(4)