遺書にはならない足跡/セグメント
 
し、一度見れば、経験すれば、たちどころに分かることがあるのではないだろうか。
 私の友人には自殺を考えたことのある人間と、自殺を考えたことのない人間がいる。後者に至っては私は本当なのかどうかと疑ってしまうくらい、信じ難い存在である。本人がそう言うのだから信じる他ないのだが、三十五年程を生きて来て、本当に一度も自ら死のうと考えたことがないのだろうか。また、そのような人間に私のような人間が相談をしたところで、表面上の感情だけでも理解して貰えるのであろうかという疑念が失礼ながらなくはない。しかしながら、不定期的に繰り返される私の症状に伴う暗い話に多忙の中、時間を割いて付き合ってくれることには素直に感謝
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