遺書にはならない足跡/セグメント
 
、テスト結果も出ていないし、医者から指摘もされていないからである。
 恋人の誕生日である八月の某日の翌日か、翌々日くらいの夜だったと思う。恋人の誕生日を手作りのハンバーグやケーキで無事に祝い、プレゼントも渡し、気が緩んでいたと、あとになって思う。
 前記した夜、私は珍しく寝付けなかった。マイスリーという薬を服用しており、それが寝付きを良くするようなのだが、その日はなかなか眠ることが出来なかった。私は確か、恋人と他愛もない話を布団に横になって話していたように思う。おそらく。この時に関することは全て、記憶が曖昧なのだ。
 私は突然、恋人を傷付けようと考えたと思う。いや、考えたというよりも、ぱっと
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