遺書にはならない足跡/セグメント
っと浮かんだと言うべきか。そして、浮かんだ以上、それを実行すべきであるという観念に駆られた。水中で生まれた空気の泡が水上に達すれば弾け消えることが当然の事象であるかのように、私はそれを実行すべきだと思ったのだ。
私は恋人に告げた。恋人に初めて話し掛けた時から、絶望に叩き落とすつもりであったと。仲良くして、告白して、互いを想うようになって、誕生日を祝い、プレゼントを渡し。幸せに包まれている時に、絶望に落とし、傷付け、その時の反応を見る為に、今まで傍にいたのだと。
ねえ、今、どんな気持ち? 今まで騙されたと知って、腹立たしい? 悲しい? 苦しい? 全部、嘘だったの。あなたを好きだと言ったのも。
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