あのときこそがきっと本当に夏だったのだ/ホロウ・シカエルボク
 
たいな蜻蛉
みんなみんな
黙って死んでいった
嬉々とした俺を見つめながら
いつでもなにかの死体が転がっていた
世界で最も意味のない死が
絨毯のように足元に降り積もっていた
気ちがいじみた夏の明かりの下で
幾つもの小さな生首が爪先を噛んでいた
嵐のせいで噎せかえる気圧に荒い息を吐きながら
記憶の中の
死体のプールに浸かる
もう
腐敗臭すらしない
ぐずぐず崩れる炭みたいな死体でいっぱいのプール
ねえ、もうそれは死じゃない、と
誰かが俺に話しかける
そうかもしれないしそうじゃないかもしれない
渇いたものはどんなものでも
薄い皮膚
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