稲妻/草野春心
 
それはまるで
  なにか別のものになったようなできごと
  僕は
  九年前に死んだ
  祖父の遺体とかさなり
  木棺のなかに横たえられる
  僕は
  かつてきみが見せた
  うつくしい裸体とかさねられる、僕は
  未だ出会ったことさえない
  自分自身の子どもたちの姿と
  かさねられる



  死は、
  一閃の稲妻のように
  世界へと突きたてられ
  いつかきみの息の根を止めさせる
  死は、
  一群の驟雨のように
  きみの臓腑を凍えさせる
  僕は哀しい
  僕は畏れる
  僕は無防備だ
  僕は怖い、あんなにも愛していたのに
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